台湾5/マジンガーZ



 今回のシンポジウムで、台湾という場所の印象も相俟って最も印象に残った発表は、膻地路子先生の「台湾はマジンガーZでなにをしたか」という発表でした。
 70年代以降、日本のサブカルチャーが台湾でどのように受容されていったかをめぐる論考で、「マジンガーZ」の受容を中心に、台湾におけるさまざまな受容のありようを紹介してくれたのですが、まずは、シンポジウムでも紹介してくれた台湾版「マジンガーZ」OPの動画を、日本版のOPとともに紹介しておきます。


 「マジンガーZ」OP



 「無敵鉄金剛」OP



 「マジンガーZ」の台湾版のタイトルは「無敵鉄金剛」。台湾ではアニメの主題歌は、かわいらしい子どもの声で歌われるのがデフォルトになっているらしく、水木一郎の必殺技連呼のOPとは、かなり印象が違います。


 盧廣仲「無敵鐵金剛」



 もう一つ、去年2008年にデビューした、オタクを売りにした22才の現役大学生シンガーソングライター、盧廣仲の曲「無敵鐵金剛」の動画も、「又貸し」ならぬ「又紹介」したいと思います。
 ぼくもマジンガーZみたいに強くなりたいんだ、と歌うラブソングなんですけど、実はもうワンクッションあって、きみはマジンガーZみたいに強いから、ぼくもマジンガーZみたいに強くなりたいっていうんですね。まず女の子が戦っていて、男の子は戦っている女の子を好きになって、そして自分も強くなりたいと願うっていう順番なんですけど、これって、実にオタクの男の子の恋愛感情を歌うラブソングとしては正しいですよね。


 いわゆる「セカイ系」って、「戦う女の子を遠くから見守りつつ、心の支えになってあげたいと願う男の子」という構図が基本なわけで、このあたりのメンタリティーを正しく共有していることに驚かされます。





 タクシーに乗っていたら、バスの膻腹の広告に盧廣仲の写真が使われていたので、思わず撮ってしまった画像です。人気者なんですね。


 さて、膻地先生が紹介してくれたものの中でも、楊茂林という現代アートのアーティストの作品は衝撃的でした。スーパーマン孫悟空が股を広げた女性の横に立っているとか、草原でスーパーマンマジンガーZを犯しているとかいったアートなんですけど、彼は、台湾文化の本質を、常にアメリカや日本の文化によって「犯されてきた」混交性に認めているらしいんですね。


 確かに、ぼくはお土産を買おうとして、「台湾っぽいお土産って何だろう?」と考えたらあまり思いつかなくて、それはぼくの勉強不足なのかもしれないんですけど、次々とさまざまな国の支配下に置かれてきた台湾という国独特のあり方というのはあるのだろう。
 そして、そのことを考えたとき、例えば、台湾のマンガ家のマンガを買おうと書店に入って、日本のマンガばかりずらっと並んでいるのを目の当たりにしたときに、このことをどう考えたらいいのか、ということですね。


 今回、台湾の学生の方たちは日本のサブカルチャーをテーマにした研究発表をしていて、懇親会ではサブカルチャーの話で盛り上がった。とても楽しかったし、とても居心地がよかったのだけど、この居心地のよさというのは台湾側の学生たちが日本のサブカルチャーに興味をもち、日本語に堪能だということに支えられているんですよね。実のところまったくフェアではない。
 そういうことを考えると、日本側の参加者としては、あまりに居心地がよすぎることに、居心地の悪さを感じる必要がおそらくあるんじゃないかという気がするんですよね。


 それはおそらく日本側の参加者はみんな感じていたことだと思うし、デリケートな部分ゆえにあえて誰も口にしなくて、それはそこの部分を口にすることはかえって自分を免罪することになるからというようなことだったと思うんですけど、でもやはりフェアじゃないような気がするので、書いておきたいと思います。


 盧廣仲「早安、晨之美!」



 盧廣仲は、普通に優れたシンガーソングライターなんですよね。この曲も軽快でいい曲です。ぜひご一聴ください。


100種生活(台湾盤)

100種生活(台湾盤)