読書会メモ:歴史叙述



記憶・歴史・忘却〈上〉

記憶・歴史・忘却〈上〉



 「理論的な本を理解できるかどうかはともかくとにかく読んでみよう」という趣旨の読書会で、ポール・リクールの『記憶・歴史・忘却』を読んでいます。第一回は参加できなくて今日は第二章だったのですが、「ゴジラ」やロボットなどのサブカル系の話題への脱線も含めて、とても楽しかったです。参加メンバーは少数なんですけど、優秀な方ばかりなんですよね。
 読書会のいいところは情報交換ができるところで、今回の読書会で話題に上がった名前で、読んでみたいと思った本を挙げておきたいと思います。


狼男の言語標本―埋葬語法の精神分析/付・デリダ序文“Fors” (叢書・ウニベルシタス)

狼男の言語標本―埋葬語法の精神分析/付・デリダ序文“Fors” (叢書・ウニベルシタス)



 ニコラ・アブラハム/マリア・トローク『狼男の言語標本―埋葬語法の精神分析』(法政大学出版局、2006.7)。デリダの序文「Fors」あり。アブラハム/トロークの重要な仕事は、フロイトの「喪とメランコリー」を受け継いで、喪の理論を発展させたこと。喪の作業は、失われた愛の対象の取り込み(introjection)によって、愛の対象を消しつつ同一化すること。一方で、喪を行わず愛の対象の喪失を否定することで、死者が体内に住みつき体内化(incorporation)、クリプト(地下墓所)化した状態をメランコリーとした。


記憶の場―フランス国民意識の文化=社会史〈第1巻〉対立

記憶の場―フランス国民意識の文化=社会史〈第1巻〉対立



 ピエール・ノラ『記憶の場―フランス国民意識の文化』全三巻(岩波書店、2002.11)。多くの歴史家たちと「記憶と歴史」の関係を見直す作業を行った大著。リクールは、フランス革命200周年の記念顕彰について、ノラが国家による記憶と歴史の一体化を批判していることを評価している。ノラが批判的な文脈で提唱した「記憶の場」という概念は、歴史修正主義者や保守派の構築主義的な思想に利用されている面がある。


集合的記憶

集合的記憶



 モーリス・アルヴァックス『集合的記憶』(行路社、1999.11)。アルヴァックス(1877〜1945)は、フランス初の社会学講座教授らしい。個人的記憶・集合的記憶・歴史的記憶を分類・検討し、のちにピエール・ノラに「発見」され、新しい歴史学に応用されていった。


記憶の帝国―“終わった時代”の古典論

記憶の帝国―“終わった時代”の古典論



 前田雅之『記憶の帝国―終わった時代”の古典論』(右文書院、2004.2) 。近代の思考の特徴を「要約」におきつつ(「源氏物語」の梗概書が作られていった辺りから始まる)、古典の方法論として記憶や連想を見いだしていく。


機械=身体のポリティーク (青弓社ライブラリー)

機械=身体のポリティーク (青弓社ライブラリー)



 収録論文の情報については、bk1で→「機械=身体のポリティーク」作品一覧


記憶する台湾―帝国との相剋

記憶する台湾―帝国との相剋



 収録論文の情報については、bk1で→「記憶する台湾」作品一覧


ナチ神話

ナチ神話



 フィリップ・ラクー=ラバルトラクー=ラバルト(1940-2007)の名前は、恥ずかしながら実は初めて知りました。ジャン=リュック・ナンシー(1940-)と共著を出しているんですね。


男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望―

男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望―



 イヴ・K・セジウィック(1950-2009)。ホモソーシャルの概念を提唱したことで知られるフェミニズムの研究者イヴ・セジウィックは、今年4月12日に乳ガンのために亡くなってますね。


【東宝特撮Blu-rayセレクション】 ゴジラ(昭和29年度作品)

【東宝特撮Blu-rayセレクション】 ゴジラ(昭和29年度作品)



 今回、「ゴジラはヤバい」という話がいちばん楽しかったのですが(「ゴジラ」(1954年)トレイラー)、読書会では参加メンバーを常に募集中ですので、参加を希望される方はメールなどで連絡ください。


 ポール・リクール