読書会&映画研究会



 昨日は読書会でリクール『歴史・記憶・忘却』。歴史的記憶について検討する前の段階で、個人的記憶と集団的記憶をどう橋渡しするかという章を読んだのですが、西洋哲学から現象学にかけての議論を緻密にたどりながら、肝心なところで飛躍するんですよね。会では、個人と社会を繋ぐのであれば、まして言語の問題を持ち出してきているのであれば、なぜラカンを参照しないのかといった疑問が出ました。もしかしたら、もう一回か二回でこの本を読むのは終わりにするかもしれません。西洋哲学の教養がおそろしく豊かなので、読んでいるととても勉強になるんですけどね。
 今日は映画の研究会で岩井俊二スワロウテイル』(1996)。公開当時から現実の移民の問題を反映しておらずリアリティーを欠いているという批判があり、今も岩井映画の中でもこの映画だけは評価できないという人が多い作品なのですが、見直してみるととても面白くて、会でもそういう印象を持ってる方が多いようでした。移民、クレオール(映画の中ではコードスイッチですが、まあ多言語使用ですね)、マイノリティーの音楽など、流行の研究領域であるポストコロニアルやカルスタの文脈に乗りそうで乗らないところが、岩井俊二の妙に頑固でヘソ曲がりなところであり一筋縄では行かないところであり。会では、「イェンタウンという空間を、現実と虚構の二項対立で構成せず、現実からズレた形で位置づけている」という発言があったのですが、現実を参照するのはむしろ簡単なはずなのに、そうではない形で表象していることが興味深いです。音楽なんて「マイ・ウェイ」が大フューチャーされてるわけですからね。確信犯の匂いが濃厚なんです。


 ともあれ、週末はふたつの研究会があって、楽しかったです。映画の研究会では司会役を振られたのですが、今回はうまくできたと思います。参加された方たち、特に発表された後輩の方には、お疲れさまでしたと言いたいです。読んでますか? お疲れさまでした。これからもがんばっていきましょう。


記憶・歴史・忘却〈上〉

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スワロウテイル [DVD]

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