分身・変形・透明化―ミッシェル・ゴンドリー制作のミュージックビデオ集



 アート系VSアイデア系―PV制作出身映画監督たちのミュージックビデオ集の流れで、ミッシェル・ゴンドリーが制作したPVをチェックしていたら、どれもこれも面白く粒ぞろいだったので、いくつか紹介しておきたい。参考にしたのは、ミッシェル・ゴンドリー@Wikipedia


 The Vines「Ride」(2005)



 多目的ホールみたいなところでバンドが演奏しているのだけど、サビに来ると、大人数のバンドが現れる。視覚的な笑いであり、ネタ的な笑いとしては、宇宙人が人間を改造し操作するThe Black Crowes「High Head Blues」(1995)のPVが冴えている。


 Kylie Minogue「Come into my world」(2002)



 カイリ・ミノーグが町を歩いている姿を、ワンショットワンシーンで写しているのだけど、カイリ・ミノーグの分身が現れたり、同じ場所が現れたり、「どうなってるんだ、これ?」という摩訶不思議な感覚に襲われていく。説明したいのだけど、見ればわかりますよね。


 Beck「Cellphone's Dead」(2006)



 Kylie Minogue「Come into my world」が分身系だとすれば、こちらは変形系。ベックの体がNHKのドーモ君みたいなものに変形したり元に戻ったりする。


 The White Stripes「The Denial Twist」



 同じく変形系。映像の縮尺が縦に伸びたり、横に広がったりするレンズを利用しているかのように、メンバーの体がぐにゃぐにゃ伸び縮みする。The White Stripes「Dead Leaves And The Dirty Ground」(2002)は、半透明の人々が出てくるのだけど、幽霊なのか、並行世界なのか、どう解釈すればいいかいまいちよくわからない。とりあえず、透明人間系としておこう。分身、変形、透明化と、ゴンドリーのPVでは、身体がテーマとされることが多いようだ。もちろん、映像メディアとの関係で身体が主題となっているわけであり、映像の時代において身体が変容を余儀なくされることが示唆されているということだろう。


 Massive Attack「Protection」 (1995)



 ワンショットワンシーンの長回しで、アパートの人々の生活を捉えていく。


 Robert「Les jupes」 (1993)



 モダンアート系。きれいですね。


 devendra banhart「a ribbon」 (2005)



 アニメーション系も多いのだけど、ここではこのPVを。リボンがひらひらと漂っていくという、寂しく抒情的な童話風の風景を描いている。


 ミッシェル・ゴンドリーは、『ヒューマン・ネイチュア』(2001)が狂騒的なバカ映画で、「なんかやかましい映画だなー」という感想だったので、それ以来見ていなかったのだけど、PVでこれだけいい仕事をしているなら、『エターナル・サンシャイン』(2004) や『恋愛睡眠のすすめ』(2006) も見てみようかな、と思う。