岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』
- 作者: 岩本ナオ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/12/21
- メディア: コミック
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ネットでも漫画読みの間で話題になっている、岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』(小学館フラワーコミックス)1・2巻を読む。天狗の父と人間の母の娘なのだけど、本人は至って普通の女の子という設定のギャグあり少女マンガで、感じとしては『のだめ』をイメージしてもらえばいいかなと。のだめよりもっと少女マンガらしいヒロインですけどね。
「父が天狗なのに本人は普通の女の子」の設定に由来するギャグが秀逸で、町の人々にとって天狗は普通に親近感を抱いている存在なものだから、ヒロインが父譲りの怪力で川に落ちそうになってるトラックを持ちあげてみんなに誉められるんだけど、その場面を好きな男の子に見られて、「きゃー、こんなところ見られたーっ!」って恥ずかしくなって逃げ出したり、やっぱり好きな男の子に「もっとお父さんに仕事の話のこととか聞いてあげなよ」と言われて、「えーやだよ。お父さんすぐ大蛇やっつけた話するもん」と答える、ヒロインの感覚(普通の女の子)と言ってる内容(非日常)のギャップが可笑しいんですね。
そんな風に、ヒロインの「普通の女の子なのになぜかモテる」であるとか過剰に「少女マンガ」しつつ、学園ラブコメから異界の空間の表象に移る手際もあざやかなんです。はっとさせられるし、とてもきれいだし、ものすごく引き込まれるんですよね。とてもうまい。日常と異界の「境界」を描く妖怪マンガとしても、おそらくこのマンガは非常に優れている。
岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』、『のだめ』ファンから『もっけ』ファンや水木ファンまでオススメできる漫画ですので、未読の方はぜひ手に取ってみてください。