グラン・トリノ



 「グラン・トリノ」、観ました。


 噂通り抜群におもしろいですねー。
 冒頭、元軍人の頑固なジジイを演じるイーストウッドの味わい深いしかめっ面を見てるうちに、あっという間に引き込まれます。


 イーストウッドの自虐的なユーモアですよね。
 頑固で嫌われ者で嫌なジジイだと思われていて周りから避けられてるんだけど、実は不器用なだけの根はいい人で、うっかり隣人にいい人であることがばれて親しく接されてとまどうっていう。


 最初は白人とアジア系移民の異文化コミュニケーションの笑いですよね。そこから入っていって、老人と移民たちのコミュニケーション、老人の罪意識、少年の成長、そして暴力と法といったシリアスな主題が語られていくんですけど、いちばん大きな主題は、アメリカの郊外住宅地がどんどん非白人系、特にアジア系の移民に浸食されていっているという社会背景が描かれていくことですよね。


 老人の選択も、それからラストシーンも示唆的なんですけど、これって、裏返しの西部劇なんですよね。
 西部劇は、白人たちがアメリカ大陸をフロンティアとして開拓していく、そして「インディアン」たちを敵として描いていくものだったけれど、現在に至って再びアメリカは「イエロー」の手に戻ろうとしている。そして、この映画では、そのことを肯定的にとらえているっていう。



 西部劇で映画スターになったイーストウッド、「許されざる者」で西部劇を終わらせたと言われたイーストウッドがこんな映画を作るっていう、すごみですよね。一貫したテーマを持っており、80代になろうという年齢で、時代状況を踏まえた上でそれを突き詰めて進めるなんて、なかなかできないですよ。
 イーストウッドフィルモグラフィーの中では、メインストリームの直系の映画なので、イーストウッドのファンはせっかくチャンスですし、見逃しなきよう。


 また単純に、誰が見てもぐいぐい引き込まれて、深い感慨を抱いて、そして考えさせられるような映画です。14日まで仙台チネ・ラヴィータで12時と21時の二回上映でやってますので、足を運んでみてください。
 ぼくも余裕があればもう一回行きます。