はてな匿名ダイアリーにコメント・その2



 数ヶ月間日雇いだけで生活していたことがある。


 派遣労働で働いたとき、そこで働いているのは、派遣事務所で寝泊まりし、稼いだ金をパチンコや酒や煙草で使い切ってしまうダメ人間ばかりだった。彼らを救う必要などない、という内容。


 たしかに、パチンコで5万円すったなんて言ってる人はいた。それで、時給800円とかで重労働をしているのに、パチンコで五万円するだなんてことをしているのはいいのだろうか、と思ったことはある。みんなパチンコはやっているようで、場所を電話で確認するときには、「○○のニューヨークの近く」という風に、パチンコ店が目印になっていた。で、それで通じると、「やってるね」と、お互いに笑ったりしていた。
 煙草も吸ってる人が多かった。運輸会社に行ったとき、休憩時間に休憩室に入るとみんな一斉に煙草を吸いはじめるので、すぐに部屋が煙で充満した。世間ではすでに禁煙が叫ばれていたのだけど、それはホワイトカラーの世界の話で、ブルーカラーの世界には一切関係のない話なのだろう。そして、実際、こんな風に働いていると、煙草でも一服やらなければやってられないのだろう。そう思った。(まあ、煙草・酒・パチンコ・麻雀は、ブルーカラーの悪徳というより、日本人男性一般の悪徳なのだけど。……ちなみに、オタク世代の悪徳は、アニメ・ゲーム・マンガ・フィギュア・ネットだ。悪徳である点については、別に変わりはしない)


 ただし、ぼくは人口30万人程度の地方都市で派遣事務所に登録していたこともあるのかもしれないけれど、このエントリに書かれているほど、ダメな人たちというのは、目にしなかった。
 まあ、地方都市は家賃が安いということもあるだろう。2〜3万円程度で、風呂・台所付きの部屋が借りられるので、いかにグッドウィルの給与が低いといっても、一週間も働けば一ヶ月の家賃は稼げる計算だ。なので、事務所で寝泊まりしている人はいなかったのだけど、部屋がないことがどれだけ人の心を荒ませるか、ということは想像に難くない。
 また、現場に行く車の中では、みんな、仕事を見つけたいのだけれどなかなかないよね、という話をしていた。地方都市では、ハローワークや求人情報を見ても本当になかなか仕事が見つからなくて、とみんなぼやいていたし、強い危機感を持っているようだった。


 そんなわけで、ぼくは、「派遣労働の経験があるが、一般常識も労働意欲もしっかり持っている人が多く、移動中は「仕事がない」という話をよくしていた。「屑」ではなく、普通の人が底辺に吹きだまらざるをえない現状を理解してほしい」というブックマークコメントを付けたのだけど、東京と地方都市の差というのもあるのだろうとは思うのけれども、「普通の人」が底辺に吹きだまっている現状があるのは事実だと思う。
 まあ、いろんな人がいたわけだけど、普通に話もできるし、頭も悪くはなさそうだし、一日一生懸命働くこともできるのに、なぜ派遣労働者として過酷な労働条件で働かなければならない状況になっているのかよくわからない、と疑問に思うような人たちが本当に大勢いた。


 おそらく、それは小泉政権で派遣労働事業が規制緩和されたためというのもあるのだろう。
 雇用が増えれば彼らの一部は安定した職業に就けるはずだが、いまの段階で彼らを現在の状況から抜け出させるために、なんらかの救済措置をとる必要はあると思う。
 とりわけ、規制緩和を取り消すのであれば、一時的に混乱が生じるのは必至だし、混乱が収まるまでに多くの犠牲者が出ることが予想されるのだから。




 Mike Shinoda「Kenji」(2005)