携帯メールショートショート Vol.7/「天罰」
携帯メールショートショートの七回目です。
天罰
めちゃくちゃ悪かった。悪い事は何でもした。女も何人も泣かせた。
車に轢かれそうな子供を助けてあっさり死んだ。俺の行為は美談となった。俺の崇拝者が現れ、彼らは教団を結成した。あれれ、俺神様になっちゃったよ。
俺を祭る教団は見る間に巨大な力をつけた。世界を二分する戦争が始まった。多くの人間が死んだ。おいおい、俺はこんなこと望んでねえぞ。
俺は天罰を与えることにした。やっぱ大洪水だよな、こういう場合。都市は水没し、人類は半分に減った。
でも教団はしぶとく生き残り、世界を支配した。
俺もときどき、暇潰しに天罰を楽しんでいる。
テーマは、「バカの正義感は頼りにならない」。いいとこあるんだけど、自分が間違ったことをしてるときそのことに気づかないし、調子に乗っちゃうんですね。
でも、神様なんて案外こんな感じかもしれないという気がしません?
超自然的な「もの」が祀られると神様に、そうでないものが妖怪になる、というある民俗学者の妖怪論が、実はこの話のベースになっています。不良は祀られているから力を発揮できるんですね。