携帯メールショートショート Vol.5/「焼き芋」



 携帯メールショートショートの五回目です。



焼き芋




 真里原トモは十五才のとき貴野木幹也に一目惚れした。電撃に打たれたような、それはまさに天啓だった。幹也は絶大な人気を誇る、今が旬のトップアイドルだった。
 トモは「結婚して下さい」という手紙を出したが、返ってきたのは「これからも応援よろしくネ☆」という誠意のない言葉だった。トモの思いが伝わってないのは明らかだった。
 トモは頭のいい子だったからストーカーになる気はなかった。自分もアイドルになって幹也に近づくべく、オーディションを受けまくった。一つも受からなかったが、そうこうするうちに「ユニークなキャラクタ―」を買われて、小さな芸能プロダクションに拾われた。
 トモは初めこそアイドルとして売り出されたが、いつの間にかバラエティー番組で引っ張り凧の人気タレントになっていた。内心大いに不本意だったが、仕方なかった。
 幹也と共演する機会は意外と早くやって来た。番組終了後、トモは幹也に誘われた。呆気ないような気がして、トモは誘いを断った。後日友達の女性タレントに、彼は誰彼構わず女性を誘うのだと教えられた。幻滅したというわけではなく、ただなんとなく残念だった。
 次の休日、トモは近くの河原で焼き芋を焼いた。一緒に幹也のグッズも全部焼いた。なんだかとてもつまらなかった。とてもとてもつまらなかった。





 ヒロインのモデルは、元モ娘。の彼女ですね。まあ、性格とかまで反映させてるわけではなくて、イメージとしては、本人は至ってきまじめで、あまり笑わなくて、自分が正しいと思うことを言ってるだけなんだけど、それが妙におかしくて人気がある、みたいな感じですかね。素のキャラがバラエティー受けしちゃった、みたいな。若槻なんかはそうなんですかね?
 まあ、そういうキャラの子が本当にそういう子かどうかは疑わしいんですけど、素のキャラが受けて人気者になる子が本当にいるのだとしたら、それはとてもおもしろいですよね。
 憧れって遠くにあるとき憧れてるのが楽しいんであって、近づいてしまうと意外とつまらないんですよね。で、焼き芋を焼きながら枯れ木が燃えるように枝をずぶずぶ差してるいかにもつまらなさそうな感じが、傍目にはかわいいよね、という。つまらなさそうにしている女の子ってかわいいと思うんですけど、どうですか?