見る時間あるの?―アメリカTVドラマを試食用ビデオで判断
最近、『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』や『ボーン・アルティメイタム』といったハリウッドの人気映画のDVDをレンタルすると、アメリカのTVドラマの第一回放送分を2〜3本まとめて収めたディスクが、もう一枚付いてくるコトが多い。
去年かおととしあたりから、映画のディスクの余った時間にもう一本アメリカのTVドラマの第一回放送分が収められるようになっていたと思うのだけど、ついにもう一枚、付録専用のディスクが付いてくるようになったわけだ。『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』自体が2時間30分もある映画だから、さらに3本のドラマを見るとなると、新作料金300円でなんと5時間半(!)も楽しめるわけだけど、おかげで時間が食われ具合もただごとではなく、なにやら罠にはめられた気分になったりもする。それなんて孔明の罠?
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まあ、何年か前から、TSUTAYAやGEOに行くと、アメリカのTVドラマが棚にずらっと並ぶようになっているわけだけど、きっかけは『24』だったと思う。『24』は、2001年から放送が開始されて、2003年からレンタルビデオ店で並べられるようになったことで、日本でも一気に人気が出た(24-TWENTY FOUR-@Wikipedia)。2003年は、韓流ドラマ『冬のソナタ』がNHK BS2で放送されて、ヨン様ブームが巻き起こり、韓流ブームが一気に加速した年でもあるから、おそらくこの辺りの時期に日本におけるドラマの受容において、何らかの変化が起きたのだと思う。
まあ日本のドラマがあまりにマンネリで、新鮮なものを提供できなくなったことも大きな原因だろうと思うのだけど、「タダで見られる退屈なドラマ」より「お金を出しても面白いドラマ」を見たいと考えるような視聴者だなんて、かつてはマニアとかオタクとか言われる存在だったのに、いまや一般層のユーザーが、シーズン7とかまで行っているようなドラマにはまっているというのは、面白い現象だと思う。『24』シーズン7すべてをレンタルビデオ店で借りて見ていて、熱く語れる人だなんて、オタクをどうこう言えないと思うのだけど。(1990年の『ツイン・ピークス』ブームも思い出されるところ。あれも一般層を巻き込んだブームだった。リンチなのに! 90年代には、『X-FILE』や『アリー・マイ・ラブ』も流行りましたね)
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世界各地で、何人かのごく普通の平凡な人たちに突然奇妙な力が備わって、みたいな話で、B級SF映画好きとしては楽しい作品ではあるのだけど、不死身の肉体を得た女子高生がチアガール姿で高いところから飛び降りてぐしゃっと肩がひしゃげるのだけどすぐに復元する場面とか、こぶとりでメガネをかけた日本人男性が「均質なのは嫌なんだっ、個性的になりたいんだっ!」って主張している演技の素人くささや台詞棒読みぶりであるとか、あまりに安っぽくて脱力した笑いを浮かべつつ呆れてしまう。安っぽいB級ホラーでも、センスのよさを感じさせるドラマもあるんですけどね。このドラマはバカっぽい。
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調べてみると、1969年生まれって、2005年の放送開始の時点で36才じゃんw ええっ、ヒロインは何才っていう設定だっけ? 公式サイトのプロフィールを見ても年齢設定は書いてなくて、しかもそれはどうやら本国の公式サイトでもそうらしく、つまり触れてはいけないことになっているらしい。「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学 メレディス・グレイ 年齢」でググると、2chで「本国の公式サイト見ても、年齢設定は載ってないよね。 自分もメレディスは30代の設定だとは思うんだけど。 誕生日関係のエピも無いね」という書き込みがあったこともわかるのだけど、なんというか、青春群像っていうにはねえ。ドラマを見ててもなんか明らかに不自然なんですよね。
スーパーナチュラル 1stシーズン (1?3話収録) [DVD]
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EP.2とEP.3では、事件に必ず美人女性が絡んできて、兄弟は彼女のために事件を解決して、それでラストでは美女が兄に感謝のキスをするというお約束のパターンが繰り返されているのだけど、毎回これをやってるんだったら、おもしろすぎるのでぼくは全部見ますw EP.2のラストで、女の子「どう感謝したらいいか……」→兄「(ニヤニヤ)」→女の子「変な想像した?」→女の子が兄貴にチュー、という流れは、それなんてエロゲ?
美形の兄弟を主人公とするシリアス&ダークなムードの作品なので、女性ははまる人が多いと思う。
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ブレナン博士は、恋愛関係では刑事の夫と離婚したのだけど、いまも友だちみたいな関係を維持しているので、いつまた結婚してもおかしくない、といった状況のよう。知的で大人なのだけど恋や人生も楽しんでいる30代女性という感じで、エミリー・デシャネル(1976年生)は実際の年齢よりも老けて見える顔立ちなのだけど、年齢相応の魅力的な女性を演じているので、かわいいし、美人だねえ、と思う。で、やはりというか、アメリカでも人気が出ているみたいですよ。
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第一話を見た限りでは悪くはないのだけれど、それほどオススメというわけでもないというか。ベトナム戦争で死んだ男の霊が30年ぶりに復活して、妻に会いたいと訴えるのだけど、妻はすでに死んでしまっていて、絶望するのだけど、自分の知らないうちに生まれていた息子と交流するうちに満足して成仏するといった感じで、どうにも「いい人」の「いい話」以上のアイデアがない点が不安なところ。ちょっとでも萌芽があれば、2話目以降も見てみるんですけどね。
主演は、ジェニファー・ラブヒューイット。1979年生まれで、代表作に『ラストサマー』。『ラストサマー2』は、「全篇にわたってぷるんぷるんさせている映画。もう、ほんとにそれだけである」とか言われてる映画なのだけど、まあセクシーさが売りの女優さんであるのは事実のよう。『ゴースト〜天使のささやき〜』ではもうちょっと知的な感じなんですけどね。
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アメリカのTVドラマで、ぼくがいちばん好きなのは、『トゥルー・コーリング』。メディカルスクールに通いながら死体安置所で働く女性トゥルーは、思いを残したまま死んだ者の死体から呼びかけられると、彼女だけ記憶を残したままで時間を遡り、事件当日の朝に目を覚ましたところまで戻ってしまう、という奇妙な力をもっている。トゥルーは、被害者がこの日に死ぬのを知っているのは自分だけという状況で、自分に助けを求めた当の相手から不審人物扱いされたりしながら、被害者の命を救うべく懸命に努力するのだが……という設定で毎回始まるわけだけど、ぶっ飛んでるよねえ。日本の新本格ミステリじゃあるまいし。
中でもお気に入りの回は、Vol.6収録のEP.11「終わりなき日/The Longest Day」。コンビニ強盗で死んだ男を助けるために現場に駆けつけたら、トゥルーが関わったことによって今度は店主が死んでしまう。そして、死んだ店主に声をかけられて、また朝からやり直し。となると、もうすぐに想像が付くと思うけれど、もう一度チャレンジすると、今度は男も店主も死なずにすんだけれど、別の人が死んでまた声をかけられてまた朝から―で、トゥルーはノイローゼになりかけるw まあ同じ日を繰り返しながら、トゥルーはだんだんこの事態の底にあるものに迫っていくのだけど、こういうキレのあるアイディア・ストーリーがいくつも入っているシリーズなので、オススメです。視聴率が低いという理由で、完結しないまま、放送終了しちゃったんですけどね。アメリカの視聴者って、やっぱりバカなのか? いや、『BONES』は人気があるわけだし、『トゥルー・コーリング』が先に行きすぎてたんでしょうね。
もてないオタクなのだけど頼りになる同僚デイビスとか、いい加減なのだけど悪いやつじゃない弟ハリソンとか、キャラクターも魅力的。もちろんトゥルーを演じるエリザ・ドゥシュクも魅力的で、とりわけ世話の焼ける弟の面倒を見るしっかり者の姉を演じているときがかっこいいです。
吸血キラー 聖少女バフィー シーズン1 Vol.1 [DVD]
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最後に取り上げたいのは、『吸血キラー/聖少女バフィー』(原題Buffy the Vampire Slayer)。まあ、タイトル通りに、思いっきり低予算番組で「B級オカルト・アクション・青春コメディー」といった感じなんだけど、意外とセンスがよくておもしろく、見てるとアメリカのオタクが作ってるんだな、というのがよくわかる。
サラ・ミシェル・ゲラー演じるヒロイン、バフィーは、世界で唯一吸血鬼を倒せる吸血鬼ハンターで、彼女の周りには吸血鬼が集まってくるわけだけど、バフィー本人は、もういい加減にしてっ! こんな生活は嫌っ! 普通の女子高生の生活をしたいっ! 彼氏が欲しいっ! 吸血鬼ハンターなんてばれたら男の子に逃げられちゃうっ!と思っていて、けれどいざ事件が起こると放っておけないいい子みたいな。すごい少女マンガ。
バフィーが力をもっていることを知っていて、バフィーのせいで危険な目に遭うのだけど、彼女を慕って離れない友人たちが何人か登場して(なかなか友だちを作れないオタクばかりなのだけど)、みんなでわいわいやってる学園ものといった雰囲気も楽しいし、まあ好きなんですよね。ゆるい作りのシリーズだなあ、とは思うんですけどね。
でも、まあ、どんなドラマがいいかなんてのは、結局好みの問題ですよね。そのために人気映画にいわば「試食用」として初回放送分を附録につけるようになったんだろうし。視聴者は、全部を見る必要はないし、またそんな時間もないのだから、「試食」した中から気に入ったやつを選んで、DVDを借りればいいというコトなんでしょう。
このエントリもそのための手がかり、というコトで。