荒木飛呂彦講演会「ジョジョの奇妙な講演」
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1993/01/07
- メディア: コミック
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荒木飛呂彦講演会「ジョジョの奇妙な講演」(@東北大学文化祭)に逝ってきました。
『ジョジョ』って今、お笑い芸人が『アメトーク』の「ジョジョ芸人」のような企画でプッシュしているし(しょこたんやきゃんちといったオタク系のアイドルたちもはずせないところ)、乙一や西尾維新ら『ファウスト』系の作家たちはもうかなり前から『ジョジョ』の影響を前面に押し出しているし(乙一『ジョジョの奇妙な冒険 ”The Book”』は今月発売!)、「ジョジョ立ち」も話題で、荒木先生の下には講演依頼が殺到しているらしいのだけど、そこは杜王町ですよ! 実際に荒木先生の故郷でもある杜王町に降臨して下さいました。『ジョジョ』の連載開始に立ち会った『週刊少年ジャンプ』黄金時代世代で、小中高時代に『ジョジョ』に熱中していた読書体験をもつ身としては、このチャンスを逃すわけにはいかないだろう、ということで、冷気の張りつめる10月中旬の深夜に毛布&ポット持参で並んで入場整理券を入手したしだいです。
荒木先生はなんだかやたらと気さくな人で、見た目も雰囲気もとても今年47才とは思えない若々しさだったし(ジョジョの作者、荒木飛呂彦に100の質問-01@YOU TUBE動画)、「芸人さんじゃないのでネタとかないので」と言いながら、ところどころで笑いを取りつつ聴衆の心を掴む、話のうまい方でした。これはああいうマンガを描いている方なのだから当たり前だけど、頭がいい人なんだろうな、と。また、聴衆は聴衆で、会場に集まったのは深夜(人によっては24時間以上)に並んだ濃いファンばかりなので、まず熱気がすごいし、キャラの名前が出ただけでどっと沸くし、細かいネタにも敏感に反応するしで、こういう聴衆を前に話をするのは、話す方である荒木先生もきっと楽しかっただろうな、と思います。大成功の企画だったのではないでしょうか。
講演の内容は、「売れるマンガ(損をしないマンガ)を描く方法」として、「ストーリー」「キャラクター」「絵」「テーマ」というマンガを構成する四つの要素を挙げつつ、それぞれについて説明するというもの。
・ストーリーについて
起承転結が基本で、「主人公が危機に陥る→事態を解決しようと努力する→さらに事態は悪化し、絶体絶命のピンチに陥る→逆転勝利」という形で、結末はハッピーエンドが望ましい。これはバトルマンガだけでなく、恋愛マンガでも同じだ。基本を知った上で外したりずらしたりするのはかまわない。(『ジョジョ』は奇想や謎解きの複雑さにばかりに注目が行くけれど、言われてみれば、起承転結のストーリーラインが守られてますね)
・キャラクターについて
ヒーローとは孤独に世界に立ち向かっていく存在であり、だからこそ泣ける。キャラクターには「善」と「悪」があり、「悪」のキャラクターであるディオや吉影を描くのはめちゃくちゃ楽しく、「善」のキャラクターであるジョナサンを描くのは難しいのだけど、作品が普遍性を獲得するためにはやはり「善」のキャラクターが必要で、「悪」のキャラクターしか出ないような作品は、話題にはなるかもしれないけれど、時代を超えることはできない。(これって、暗に『DEATH NOTE』をDISってらっしゃったのでしょうかw)
・絵について
絵は遠くから見ても一目で誰にでもわかる絵でなければならない。ドラゴンボール、北斗の拳、キン肉マン、ミッキーマウス、ドラえもん、ウルトラマン、バットマン、何でもそうで、15m先からでもわかる個性がある。バーネット・ニューマンという抽象表現主義絵画の画家がいて、オレンジを塗ったくってるだけのような絵なのだけど、やはりぱっと見て、あ、これバーネット・ニューマンってわかる。(Google画像検索「バーネット・ニューマン」)
・テーマについて
ストーリーの奥にあるもので、読者を説教するのは最悪だ。
後半は、「ジョジョ立ち」の鬼教官さんとカジポンさん(カジポン・マルコ・残月)が登場し、「ジョジョ立ち」を披露。「ジョジョ立ち」というのは、『ジョジョ』の作中でキャラクターたちがありえない角度に関節を曲げながら、体全体が奇妙にねじれたポーズを取っているのを、リアルな人間が模倣するというもので、ただそれだけで一瞬のうちに現実の空間がファンタジーの空間に変貌する抜群の破壊力をもったパフォーマンスであり、ある種のスタンド攻撃でもある、というものです。ネット発のムーヴメントなので、見たことがないという方は、一度Webサイト「ジョジョ立ち教室」をぜひ。もちろんこのコーナーが盛り上がらないわけがなく、たいへん楽しかったです。
ジョジョ立ち教室
実録!杜王町潜入ルポ〜ジョジョ第4部ロケ地めぐり&仙台JOJO立ち’04.7.31〜
とりわけ仙台市民であれば、このルポは笑えるでしょう。勾当台公園で何やってんだかw
以下、印象に残ったお話を箇条書きでメモしておきます。
・少年時代から「謎」が好きだった。雪の上に点々とついている動物や鳥の足跡を追いかけていくなんてことをよくしていた。
・初めてスタンドを出したときは、「わからないよ」とみんなに反対された。一人の編集者だけが賛成してくれて、それを支えに描いたけれど、やはり最初はなかなか人気が出なかった(ああ、そういえばそうでした。えーっ!?って感じだったな)
・アイデアは常に日常に転がっている。画家がタヒチに行ったのはなぜだろうとか、殺人鬼が杜王町にいるのはなぜだろうとか。
・岸辺露伴は理想のマンガ家として描いている。自分がモデルというわけではない。
・キャラでは仗助が好き。友だちを描いてるような感じで、それ以前は神話の世界のヒーローを描いているような感じだった。
・スタンドで好きなのは重ちーの「ハーヴェスト」。ベットの下にクーポン券を落としたときとかにいたらいいなと思う。
・電車の中で若者たちのくだらない会話を聞いているのが好き。仗助と億泰がくだらない話をしてるんだけど、ああいう会話をしていることで、「ああ、この二人は絶対に裏切ったりしない関係なんだな」ということが読者に伝わると思う。
・『ジョジョ』のバックボーンは、血統。何が怖いかと考えたとき、自分は悪いことをしていないのに、先祖の因縁で得体の知れない相手に襲われるということほど怖いものはないと思う。(そういえば、つのだじろう『恐怖新聞』で一番怖いのがこんな感じのエピソードでした)
・擬音語は、当時テクノが流行っていたので、変わった音を入れたいと思った。テクノポップがあるから『ジョジョ』がある。
・「WRYYYYYYYYYYYYY!」は巻き舌で発声するのが本当。(荒木先生ご自身が巻き舌の「WRYYYYYYYYYYYYY!」を披露。プライスレスな価値を感じた瞬間でした)
・影響を受けたマンガ家は、『ジャンプ』の作家たち以外では、横山光輝『バビル2世』と梶原一樹で、『バビル2世』の感情を排したクールな語り口と、梶原一樹の断言や台詞回しの両方に影響を受けている。
・「圧迫祭り」は、たしかに反響が大きかった。(そうみたいですねw Google検索「圧迫祭り」)
ジャンプ SQ. (スクエア) 2007年 12月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/11/02
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The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day〜
- 作者: 乙一,荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
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- メディア: 単行本
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ユリイカ2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦 鋼鉄の魂は走りつづける
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