携帯メールショートショート Vol.11/「裏切り」



 携帯メールショートショートの十一回目です。
 とりあえず、この回で最終回です。次にアップするとすれば、それは新作なんですけど、書くことってあるのかなあ……。気が向いたら書くこともあると思うので、そのときは宜しくお願い致します。



裏切り




 目を赤く泣き腫らして帰宅した夜、部屋の前に、賢そうな白猫が佇んでいた。
 雌のようだった。ペット可のアパートだったから、私は彼女を飼いはじめた。女同士の共同生活が始まった。
 彼女は物静かな同居人だった。穏やかな瞳で見つめられていると、私の気持ちが判るんじゃないかとよく思った。
 春、彼女はいつの間にか妊娠していた。
 仔猫が生まれると、内一匹を連れて、彼の家に行った。猫の子くらい育てられるでしょ。そう言うつもりだったが、誰もいなかった。バカみたいだ、私。
 帰宅すると、彼女は消えていた。関係は破綻したのだ。





 これは、実は思い入れの強い作品です。読者が状況を理解できるぎりぎりの短さの中に物語を凝縮しているので、かなりわかりにくいんですけどね。でも、短さも含めて表現したかったものなんです。
 状況を説明しておいた方がいいでしょうね。語り手はOLで、会社の上司と不倫して妊娠。産みたいと言ったのだけれど、「堕ろせ」と言われたので堕胎。冒頭で泣いてるのは、「堕ろせ」と言われた日であるとか別れ話をした日であるとか、そういう日だったんですね。タイトルの「裏切り」にはまず、上司のヒロインに対する裏切りがあり、後半ヒロインは、皮肉を言うつもりで、上司の家に猫の子を持っていったというわけです。
 テーマは、猫と人間という種を越えた女同士の友情。そして、人間の動物に対する身勝手さですね。動物を人間扱いして、傷を癒してくれる親友とかいう一方で、「猫の子くらい」とかいって平気で軽く見ているわけです。上司への復讐のために大事な仔猫を利用したのは友情への裏切りなわけで、これがもうひとつの「裏切り」ですね。動物は都合次第で上げたり下げたりする人間を冷ややかに見てるよ、という話なわけなんですけど……まあ、わかりにくいですよね。
 できれば、繰り返し読み返してくれると、ありがたいな、と思います。