超やべー





 先日、TSUTAYAでDVDを選んでいたら、近くでキャップを被った若者ふたり組が、「『ただきみを愛している』って、超やべーらしいよ。どこーっ?」と話しながらDVDを探していて、なかなか見つけられないようだった。
 なので、「うんうん、わかるわかる、『ただ、君を愛してる』は超やべーよなー、あおいちゃんもかわいいし」とか思いつつ、「ここですよー」と教えてあげたら、「ありがとうございまーすっ!」とお礼を言ってレジに持っていた。


 最近の若者って、語彙が少なくて一見バカみたいなんだけど、意外と礼儀正しかったりして、かわいいよなー。なんか楽しそうだし。好奇心もしっかり持ってるしね。
「『恋愛寫眞』はもっとやばいから、それよかったらこっちも観てみなよーっ」って教えてあげたかったんだけど、それじゃレンタルビデオ屋のアルバイト時代のタランティーノだよ、しかもおれ店員じゃねーし、ただの客だし……と、ここは我慢。


 でも、いいよなー。
 彼らを見ていると、おれも「超やばい」オンリーで映評やりたいよ、と思う。


 黒澤明の『野良犬』、超やべーよっ! 刑事と犯人が追いかけっこしててさ、ふたりがにらみ合ってるところで、刑事の背広に蠅がとまってるんだよっ!
 なにこれ? なんでここで蠅がとまるの? すげーよっ! 黒澤明って、超やべーっ!


 ……全然イケそうじゃん? と思わないでもないけれど、なんかタランティーノっぽいなw
 まあねえ、イケメンのサブカル系男子だったらそれでも読者がつくような気がするんだけど、おれじゃねえ……。読者がつくわけない。


 いや、でも、実際のところ、ぼくが映画監督だったら、若い子に「超やべーっ!」って言ってもらえたら、すごく嬉しいだろうな、と思いますよ。
 未来は断然、彼らの側にあるわけですからね……。